ニュートンの定理

平面幾何学でニュートンの定理と呼ばれるものはいくつかありますが, 次はその中の一つです。

 ニュートンの定理 四角形 ABCD の辺 AB と CD の交点を E, BC と DA の交点を F とするとき, 線分 AC, BD, EF それぞれの中点は一直線上にある。

AC, BD, EF を直径とする円(黄色)と根軸(緑色)を
または します。
黄色の 3つの円が交わらないときに現れる
薄緑色の2つの円は黄色の 3つの円に直交し,
中心は緑の直線上にあります。このことから,
緑の直線が根軸であることがわかります。

 点 P を通る直線が円 Θ と A, B で交わるとき, AP と BP の積 AP BP を P の Θ に関するべきといいます (線分の長さには向きをつけて考えることにしますので, べきは P が円の内部にあるときは負, 外部にあるときは正になります)。 二つの相異なる円 Θ, Λ に関するべきの等しい点の軌跡は直線になります(*)。 この直線を Θ, Λ の根軸といいます。 3つの円 Θ, Λ, Ω が一般の位置にあれば, それらに関するべきの等しい点は一点だけですが, 二点以上のときは3つの円に関するべきの等しい点の軌跡は直線になります。 このとき, この直線を Θ, Λ, Ω の根軸と呼び, Θ, Λ, Ω は根軸を持つということにします。

 定理 上の定理の AC, BD, EF を直径とする3つの円は根軸を持つ。

 以下, 座標が虚数の点も考えることにします。 したがって, 相異なる二つの円は2実点で交わる, 1実点で接するか2虚点で交わります。 2点で交わるときはそれらを通る直線, 1点で接するときはそこでの接線が 根軸です(*)
 Θ を GH を直径とする円とし, 中心を O とします。 このとき, G + H = 2O ですから, 点 P が Θ 上にあるための必要十分条件は
(P - O)・(P - O) = (G - O)・(G - O) ⇔ (P - G)・(P - H) = 0
です。 ここで X・Y は X と Y の内積です。
 ニュートンの定理の AC, BD, EF を直径とする円をそれぞれ Θ, Λ, Ω とします。 そのなかの二つの円の交点がもう一つの円の上にもあることを 示せば, 上の定理を証明できます。 Θ と Λ の交点の一つを G とします。
C は BF 上の点ですから C - G = s(B - G) + t(F - G) と表せます(s + t = 1)。 (A - G)・(C - G) = 0 ですから
BC / CF = t / s = -(B - G)・(A - G)/((F - G)・(A - G))
です。 同様に
FD / DA = -(F - G)・(B - G)/((A - G)・(B - G))
です。 したがって, ⊿ABF と直線 CD にメネラウスの定理を適用すると
AE / EB = -(A - G)・(F - G)/((B - G)・(F - G))
が成り立ちますから, (E - G)・(F - G) = 0 です。 即ち, G は Ω 上の点でもあります。

(*) f, g を x2, y2 の係数が 1 の x, y の二次多項式で Θ, Λ がそれぞれ f = 0, g = 0 で表されるとします。 f, g の xy の係数は 0 ですから, f - g は一次式です。 点 P に対して f(P), g(P) はそれぞれ Θ, Λ に関するべきですから, f - g = 0 は Θ, Λ の根軸を表します。 また, 点 P が Θ と Λ の交点ならば, (f - g)(P) = 0 です。 したがって, Θ と Λ が二点で交わるならば, それらを通る直線が根軸であり, 一点で接するならば, その点における Θ, Λ の接線が根軸です。